仕事の連絡が続いた。打ち合わせが終わっても、電話が切れなかった。
黒岩はよく話した。百合は聞いた。
ある夜、打ち上げパーティで二人が残った。
「蓮見さん、離婚してるって本当ですか。」
百合はグラスを置いた。「誰から聞いたんですか。」
「業界は狭いので。」
「してます。」
「辛くなかったですか。」
百合は少し考えた。
「辛い、とは少し違うかな。静かになった、って感じです。」
黒岩はしばらく黙っていた。それから言った。
「俺、会社がうまくいってないんです。騙されたかもしれない。」
グラスの氷が、音を立てた。
百合は黙って聞いた。最後にこう言った。
「生き残れますよ、黒岩さんは。」
「なんで、そう思うんですか。」
百合はコートを羽織りながら答えた。
「なんとなく。」
しばらくして、連絡が来た。
「森に行きます。」
百合は3秒考えて、返した。
「気をつけて。」
またしばらくして、連絡が来た。
「イノシシと友達になりました。」
百合はその文を見て、声を出して笑った。久しぶりに、声を出して笑った。
返信した。
「よかった。」