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第11章

黒岩の転落

仕事の連絡が続いた。打ち合わせが終わっても、電話が切れなかった。

黒岩はよく話した。百合は聞いた。

ある夜、打ち上げパーティで二人が残った。

「蓮見さん、離婚してるって本当ですか。」

百合はグラスを置いた。「誰から聞いたんですか。」

「業界は狭いので。」

「してます。」

「辛くなかったですか。」

百合は少し考えた。

「辛い、とは少し違うかな。静かになった、って感じです。」

黒岩はしばらく黙っていた。それから言った。

「俺、会社がうまくいってないんです。騙されたかもしれない。」

グラスの氷が、音を立てた。

百合は黙って聞いた。最後にこう言った。

「生き残れますよ、黒岩さんは。」

「なんで、そう思うんですか。」

百合はコートを羽織りながら答えた。

「なんとなく。」

しばらくして、連絡が来た。

「森に行きます。」

百合は3秒考えて、返した。

「気をつけて。」

またしばらくして、連絡が来た。

「イノシシと友達になりました。」

百合はその文を見て、声を出して笑った。久しぶりに、声を出して笑った。

返信した。

「よかった。」

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