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第五章

友人

昼休み。

拓海は同期の田中と飯を食っていた。

田中は営業部だった。

明るい男だった。

よく笑う男だった。


「なんか最近、雰囲気違くない?」

田中が言った。

「そう?」

「なんか、考えてる感じ」

「考えてるよ」

「何を?」


拓海は少し考えた。

どこまで話すか。


「ヒーロー映画って、なんで好き?」

唐突だった。

田中が箸を止めた。

「え、急に?」

「なんとなく聞きたくなった」

「好きだからじゃない?かっこいいし」

「世界を救うのが好き?」

「まあ、そういう爽快感があるよな」

「自分も救いたいと思う?」

田中は笑った。

「俺が?無理無理。俺、営業のノルマも達成できてないのに」


拓海は定食を食べた。

「でもさ」と拓海は言った。「俺たちって、日常の中で毎日選択してるじゃん」

「選択?」

「何を食べるか。誰に優しくするか。何を信じるか。その積み重ねが、世界を作ってるんじゃないかな」

田中がぽかんとした顔をした。

「哲学始めた?」

「違う」

「宗教?」

「違う」

「じゃあ何」

拓海は少し笑った。

「わからない。でも、何かが変わった気がしてる」


田中は定食を食べた。

しばらく黙っていた。

それから言った。

「俺さ、最近、電車でスマホ見てる時間がもったいない気がしてきた」

「なんで」

「なんとなく。外見た方がいい気がして」

拓海は田中を見た。

田中は気づいていなかった。

自分が言ったことの意味に。


でも、何かが動いている。

拓海はそう思った。