昼休み。
拓海は同期の田中と飯を食っていた。
田中は営業部だった。
明るい男だった。
よく笑う男だった。
「なんか最近、雰囲気違くない?」
田中が言った。
「そう?」
「なんか、考えてる感じ」
「考えてるよ」
「何を?」
拓海は少し考えた。
どこまで話すか。
「ヒーロー映画って、なんで好き?」
唐突だった。
田中が箸を止めた。
「え、急に?」
「なんとなく聞きたくなった」
「好きだからじゃない?かっこいいし」
「世界を救うのが好き?」
「まあ、そういう爽快感があるよな」
「自分も救いたいと思う?」
田中は笑った。
「俺が?無理無理。俺、営業のノルマも達成できてないのに」
拓海は定食を食べた。
「でもさ」と拓海は言った。「俺たちって、日常の中で毎日選択してるじゃん」
「選択?」
「何を食べるか。誰に優しくするか。何を信じるか。その積み重ねが、世界を作ってるんじゃないかな」
田中がぽかんとした顔をした。
「哲学始めた?」
「違う」
「宗教?」
「違う」
「じゃあ何」
拓海は少し笑った。
「わからない。でも、何かが変わった気がしてる」
田中は定食を食べた。
しばらく黙っていた。
それから言った。
「俺さ、最近、電車でスマホ見てる時間がもったいない気がしてきた」
「なんで」
「なんとなく。外見た方がいい気がして」
拓海は田中を見た。
田中は気づいていなかった。
自分が言ったことの意味に。
でも、何かが動いている。
拓海はそう思った。