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第四章

日常

翌朝。

拓海は電車に乗っていた。

いつもの通勤電車だった。

いつもの時間だった。

いつもの車両だった。


違ったのは、拓海の目だった。


向かいの席に、サラリーマンが座っていた。

五十代くらいだった。

疲れた顔をしていた。

スマートフォンを見ていた。

画面の中に、ニュースが流れていた。

イランの話だった。

男は画面をスクロールした。

次のニュースへ。

芸能の話だった。

男は少し、表情が緩んだ。


関係ない、と思っているんだろうな。

拓海は思った。

そして気づいた。

一週間前の俺と、同じだ。


怒りではなかった。

責める気持ちでもなかった。

ただ、わかった気がした。

この男も、忘れているだけだった。


電車が駅に止まった。

人が降りた。

人が乗ってきた。

ドアが閉まった。

電車が動いた。


拓海は窓の外を見た。

東京の景色が流れていた。

ビルが流れた。

線路が流れた。

空が流れた。


この景色を見ている人間が、全員観測者だとしたら。