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第14章

輪廻

黒岩から久しぶりにメッセージが来たのは、森に行ってから3ヶ月後だった。

「仕事、決まりました。来月から。」

百合は返信した。

「よかった。どんな仕事ですか。」

「自然農法と、村の情報発信。WEBも少し使うので、無駄じゃなかった。」

百合は少し笑った。

「無駄なことって、ないんですかね。」

しばらくして返信が来た。

「蓮見さんらしいこと言いますね。俺、森にいて気づいたんですけど。」

「何ですか。」

「イノシシって、毎日同じ道を通るんですよ。でも同じようで、少しずつ違う。昨日より少し深い轍になってたり、新しい匂いを嗅いでたり。」

百合は画面を見たまま、動かなかった。

「それで?」

「なんか、そういうものかなって。同じところをぐるぐるしてるみたいで、ちゃんと進んでる。」

百合はその文を、3回読んだ。

窓の外に、夜の東京があった。無数の光が、動いていた。止まっていた。また動いていた。

同じところをぐるぐるしてるみたいで、ちゃんと進んでる。

百合は2万冊の中で、輪廻という言葉を何度も読んでいた。仏教の本で。ヒンドゥーの話で。ギリシャ哲学の端っこで。

でもそれは全部、本の中の言葉だった。

黒岩の言葉は、イノシシの話だった。

なのになぜか、同じことを言っていた。

返信した。

「イノシシに会ってみたいです。」

すぐに返ってきた。

「来ますか。車で3時間くらいです。」

百合は3秒考えた。

「いつがいいですか。」

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