信号が青になった。
人が動き出した。百合も動いた。
交差点の真ん中あたりで——なぜか、足が一瞬止まった。理由はわからなかった。
すれ違いざまに、見た。向こうも、見ていた。
1秒もなかったと思う。でも妙に、長く感じた。
知っている。
そう思った。でも知らない顔だった。
人の波に流されて、男は消えた。百合も歩き続けた。
交差点を渡りきって、なんとなく振り返った。
向こうも振り返っていた。
また、目が合った。
ただ、それだけだった。
百合はまた前を向いて歩き続けた。
夜、部屋に帰ってから、彼のことを思い出した。
なぜか、忘れることができなかった。