その後、世界は変わらなかった。
ニュースは続いた。
戦争は続いた。
計画書通りに動く人たちは、動き続けた。
でも、エマも動き続けた。
透も動き続けた。
二人だけではなかった。
同じことに気づいた人たちが、世界のどこかにいた。
名前も知らない。
顔も知らない。
でも、確かにいた。
ユーフラテスは、まだ流れていた。
細くなっても、流れていた。
水は海へ行く。
海から空へ行く。
空から山へ行く。
山から川へ戻る。
形は変わる。
でも、同じものだ。
エマはある朝、いつもの道を歩いていた。
小さな原っぱの前を通った。
足が止まった。
白があった。ピンクがあった。様々な緑があった。
朝日の中で、朝露が光っていた。
スマートフォンを取り出さなかった。
ただ、立っていた。
今日も、ただ立っていた。
それで、十分だった。
了
絵馬 ~エマの物語~
五十音百 著